テキストサイズ

精霊と共に 歩睦の物語

第11章 記憶の…困惑

 楓 視点


「歩睦…」

(あんなに力を使ったら、疲れるわよね…)
 車のシートに体を預けて、眠っている歩睦の額をさわる。


 歩睦の体がピクッと動く。

「歩睦ちゃん?起きた?気分は…」
 楓が声を掛ける。


「わああああああああああああああああああああああ」
 歩睦は目を見開き、叫び声をあげる。

「歩睦!」
 楓は、慌てて歩睦の体を抑える。

「嫌だ!遥香!遥香がぁ!」
 頭を掻きむしり、しきりに『遥香』の名前を叫ぶ歩睦。


(ハルカ?もしかして、記憶が…)
「歩睦ちゃん!歩睦ちゃん!落ち着いて…」
 暴れる歩睦を押さえつけるように楓が抱きしめる。


「ああぁぁ…はぁぁ」
 叫びはしないが、息が上がっている歩睦。


「大丈夫…夢よ…現実じゃない…」
 楓は、歩睦をしっかり抱きしめる。


「はぁ、はぁ、助けて…はぁ、はぁ、助けなきゃ…」
 歩睦は激しい息遣いの中で、言葉がこぼれる。


「歩睦ちゃん!記憶と知識を取違えないで!大丈夫!絶対。私達が守るから…」
 歩睦の耳元で囁く楓。

「ぁ…はぁぁ…すぅはぁぁ…」
 息が落ち着いてきた歩睦。

「よしよし…」
 楓が優しく頭を撫ぜる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ