テキストサイズ

精霊と共に 歩睦の物語

第11章 記憶の…困惑

(ユティル…目の前にいる。動いている。声が聞こえる。小さい人…)
 歩睦はぼんやりユティルを見る。

{小さい人ってひどいな。僕は土の精霊だよ!}
 ユティルが膨れた顔で周りを飛ぶ。

(はは、ユティルには、筒抜けだったね…ごめんね。まだ実感が薄くて…)


{僕は待ちに待ってだからね。ウキウキだよ}


(待ってたの?)

{うん。でも、ちょっと…前倒しになったけど…僕は歩睦と共にある者。歩睦のそばにいるよ}


(”記憶と知識”か…楓先輩も僕の事見守ってくれてたのかな…)

 楓が言った言葉が妙に引っ掛かる歩睦は額に手を持っていき摩る。



(結界…精霊…犬神…あの黒い塊(かたまり)…ほんと…ゲームの世界だよな…)
 歩睦は周りを見回す。


「歩睦!」
 遥香がトングをもったまま手を振る。

 歩睦は答えるように、大きく手をあげる。

(普通の世界だと思っていた…でも。僕の常識が通用しなくなるんだ…)


 心臓がドキドキして苦しくなる。

(ユティル。僕は…大丈夫なのかな…)
 不安そうな顔でユティルを見る。



「お兄ちゃん!」
 実が走ってきた。



{歩睦。今は食事にしよう}
 ユティルが髪の毛を引っ張る。

(…うん)
 小さくユティルに答える


「お肉。焦げちゃうよ!」
 実が歩睦のTシャツを引っ張る。


「それは大変だ!!行こう」
 歩睦はいつもの笑顔で、実と一緒に火のそばに向かう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ