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精霊と共に 歩睦の物語

第11章 記憶の…困惑

「涼君。私をみなさんの所に連れて行ってくれる?」
 紅葉がほほ笑みながら言う。

「は、はい!こちらです」
 涼は、一瞬で紅葉のそばに行き、荷物を持って誘導する。


「じゃ、歩睦くん…またね」
 手を振って進みだす。

「ささ、こっちです!」
 涼の周りにハートが飛んでいる。



{行ったね…}
 ユティルが歩睦の周りをフワフワ飛んでいる。


{ご尊顔を拝啓できて嬉しく思います}

 さっきまで紅葉が立っていた所に歳を重ねた犬がいた。

 歩睦は、その声がこの老犬の声だと気づく。

(ユ…)
 歩睦はユティルを見る。

 ユティルはニコニコしている。

(…あなたはドナタですか?)
 歩睦は声にたいして、質問をする。


{わたくし、草苅一族に仕えるイヌガミでございます}
 老犬がお座りをした状態から頭を下げていた。

 歩睦はその老犬を見て、周りを見回す。

 誰も老犬に気づいていない。
 声も、歩睦にしか聞こえない。


(ご丁寧にありがとうございます。土居歩睦です)
 歩睦が頭を下げる。



{この地域は我らの縄張りです。ごゆるりとお楽しみください}
 挨拶をした犬はすーと消える。

(消えた…)


{歩睦!いい感じ!}
 ユティルが嬉しそうに言っている。

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