テキストサイズ

精霊と共に 歩睦の物語

第5章 花火を見るって大変

「あ!ホッとドックだ!お母さん、食べたい!」
 実が景にねだる。

「さっきから食べてばっかりね、すみません…」
 景がホットドックの屋台の前で足を止めた。

「一つください」

「はい、あ。景さま…じゃなかった。まいど!歩睦君のママさん」
 ホットドックを作っていたのは、紅葉の兄だった。

「あら、先日は歩睦がお世話になったみたいで、ありがとうね」
 景がお礼を言う。

「歩睦、お礼言いなさい」
 景が歩睦を呼ぶ。

「はい。ありがとうございました」
 歩睦が、頭を下げる。

「いいって、歩睦君は大事な子だからな」
 兄は、優しく笑う。

「はい…」
 歩睦が照れて笑う。

「あ!歩睦は僕のだからね」
 楓が歩睦を抱き寄せる。

「せ、先輩!暑苦しいですよ」
 歩睦は楓からすり抜ける。

「いやん、逃げると追いたくなる!まてまて」
 楓は、悪乗りした顔で歩睦を追っかける。

「もう!」
 歩睦は、小走りに逃げる。


「ハシャいじゃって、ふふ。歩睦君が可愛くてしょうがないのね」
 紅葉が微笑みながら、遥香の側に来る。

「そうですね。楓先輩はずっと親切にしてくれてます。でも、最近ちょっと過保護ですね」
 遥香はプチ鬼ごっこの二人を見て苦笑する。

「そうね……約束の刻が近いから…」
 誰かに言っているのではなく、自分に言っているような声で、紅葉は言う。

「約束の…?」
 遥香はその言葉が気になる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ