恋論! *-平凡ちゃんと2人の王子くん-*
第4章 彼女-*-*-幸斗side
昔から…というか、
物心ついた頃には、俺はいつもまわりから
"かっこいい"だの"イケメン"だの言われていた。
近所の人からは、
[幸くんはほんとにお顔が綺麗]
と言われ、
幼稚園の頃も小学生の頃も
なにもしなくてもまわりに女の子が集まった。
そう、こんなことはあまり言っちゃいけないけど、
俺がなにもしなくても、女はいつも寄ってくる。
[私、きれいでしょ?]
[私、優しいんですよ。]
偽りで全部覆って、"いい自分"を押し付ける。
[だから、好きになってください。]
そういうオチだ。
俺の顔しか見てないクセに、
俺の中身を勝手に想像して、
俺が自分を好きなんだと勘違いする。
冷たくすると、[嫌いなの?]と泣く。
まあ、そういうわけで、
こうグチグチ言ってるときっと永遠に続くから、話を戻そう。
俺が年を重ねるにつれ、まわりに集まってくる女子の数は増えた。
俺は、その頃はまだ、
今みたいに簡単に受け入れるやつじゃなくて、
ちゃんと好きな子を見つけたいと思っていた。
けど、小学5年生のとき、
同級生だったか、近所の人だったか、
誰かに言われた言葉で俺は変わった。
残念ながら、今じゃ、よく思い出せないけど、
そのときから俺がすごく
"世間体"を気にし始めたのは覚えてる。
『かっこいい人には可愛い彼女がいる。』
そんな"世間"の一般的な考えに
逆らわないように、
俺は一般的に顔が可愛いとか美人とか
いわれる分類の人…
つまり――、
"一般的にかっこいいといわれる俺"の隣に見合う人
を受け入れるようになっていた。
そして、
『かっこいい佐野くん』の評価を保ちたかった。
だけど、それはとことんつまらなかった。
いくら可愛くても、美人でも、
好きになれなかった。
他人からうらやましがられても、
俺は物足りなかった。
そして、今に至る。
正直、怖いと思う。
いつの間にか、"恋"だとか"愛"だとか
"好き"とか"愛する"とかいう感情が
わからなくなった。
もしかして俺は、このまま好きな人ができずに、
好きでもない人と結婚するのかもしれないと思うと、寒気がした。
隣でニコニコとファンの"女の子"に
手を振る真白がちょっとうらやましかった。