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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第23章 揺れる心

「父上に対して、それはあまりに無礼ですよ、光王どの」
 妙鈴が甲高い声を上げた。
「良いのだ、夫人(プーイン)。儂がこれの母親に対してしたことは、そう言われても仕方のない所業なのだ」
 その言葉に、妙鈴が鼻白んだように押し黙った。二十九年前、真悦に意中の妓生がいると知った時、妙鈴は両親や乳母の前で見苦しいほど取り乱し、半狂乱になった。
―お願い、父上、母上。何とかして。私は真悦さまを心からお慕いしているの。あの方でなくては駄目なのです。
 そのひと言が愛し合っていたひと組の恋人たちを無惨にも引き裂いたのだ。彼女の父は真悦の父に対し、息子と妓生を即刻別れさせと迫り、それができなければ、国王へのとりなしもしないと半ば脅迫紛いのことまでやってのけた。

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