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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第24章 交錯する想い

 自分が親になることに感慨を抱(いだ)くと、自然に父のことが思い出された。学問に造詣が深く、穏やかだった父。香花が幼い頃はよく膝にのせては様々な興味深い話を聞かせてくれた。香花が六つのときに母が亡くなって以来、父(おや)娘(こ)は二人だけで八年間、過ごしたのだ。
 真悦の穏和な人柄は、どことなく香花の父に似ていた。今もこうして優しく肩を叩かれると、生き返った父が初めての孫の誕生を歓んでくれているような錯覚に陥る。 

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