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アルカナの抄 時の息吹

第7章 「審判」逆位置

葬儀は粛々と執り行われ、つつがなく終わる。あたしはそこで初めて、彼の名と歳を知った。エラン、16歳。年齢の割に大人びた青年だった。

王は脱け殻のように、ぼんやりとその様子を眺めていた。あたしがいくら話しかけようと、心ここにあらずといった感じで、生返事や気のない返事が返って来るだけ。時折温もりを求めるように、あたしを抱き締める。

葬儀から何日か経ってもそれは同じだった。無言のままにあたしの胸元に顔をうずめる王は、甘えるようでも、何かから身を守るようでもあった。

「ガロウ」

「ん……」

「あなたはどうしたいの?」
厳しい目を、生気のない王にまっすぐ向けた。その目から逃れようとすら、王はしない。

「…わからない」
王は数秒後に答えた。魂が抜け、何もかもに無気力だった。

「ずっとそうやってぼーっとしてるの?」

王は答えない。

「…わからないのはね。あなたが自分を見つけていないからよ。自分がどこにいるか、把握できてないの」

このままではいけない。

「…戻るわね、あたし」
王にそう告げ、あたしは王の寝室を離れた。





           第七章 完

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