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アルカナの抄 時の息吹

第8章 「世界」正位置

そう、このままではいけない。

…このままあたしが側にいては。王は、ダメになってしまう。


あたしは、随分ご無沙汰だったスーツ姿で道を歩いていた。考えてみたら、外へ出るのは久しぶりだ。城の庭も外と言えば外だけれど。

ここは、城郭の外。澄みわたった空が広がっている。道に慣れていないし、本当は仰ぎ見る余裕などないが、周りの風景を楽しみながら、一人歩いている。…もう二度と通らない道を。

実は、城で暮らす間も、何回か街へ出てみたことがあった。その時はあまり時間がなく、それほど遠くまで行くことができなかった。

そろそろ、初めて通る道。今日は、そのずっと先まで行くつもりだ。最終目的地は教会。隣国にあるらしい。そこでは、無償でパンやミルクを配っているという。

…何日か、そこでお世話になろう。

こんなに長く歩くのは、何年ぶりだろう。元の世界の日常では、よほど健康志向の高い者でない限りはまずないだろう。それほど歩いて、やっと教会についた時にはもう夜だった。

…夕方くらいにはつくかなと思ってたんだけど。

今晩からお世話になります、と心で言いながら、扉を開けた。

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