アルカナの抄 時の息吹
第5章 「恋人」正位置
「たまらなく愛しいんだ。一瞬たりとも手放したくないくらいに」
苦しげに顔をしかめる王。これほどまでに感情に支配されるのは、王にとっては初めてのことだった。
「どうすればいい?どうすればこの感情を抑えることができる…?」
絞り出すように言った。
「ありがとう。そこまで愛してくれて」
背中に手を回し、抱き寄せる。王の胸に顔をうずめると、ドクリドクリと鼓動が聞こえてくる。
「だけど、それをそのまま出してはいけないの。感情のままに動いては。相手のことを思いやりながら想うのが、本当の愛よ。押しつけてはだめ」
手を緩め、王の顔を見つめる。困ったような、不安げな表情だった。
「難しい、な…」
「できるわ。あなたなら」
王の頬に手を触れる。
止められないなら、あたしが止めるしかない。そう思ってたけど…――だけど信じよう、あなたを。
「…わかった。努力する」
その言葉に、あたしは微笑む。もう一度軽く口づけると、夜にまた来るから、と部屋を出た。
そしてその夜。約束通り、あたしは王の部屋を訪ねる。
「マキ」
愛しげに名を呼ぶ王の髪は、さらに伸びていた。短髪だったのが、今では肩に触れるほどだ。
「また…龍になったの?」
「ああ…だが、大丈夫だ。自制できてる」
おまえへの想いを。王は柔らかく笑み、あたしの頬に触れる。
「…そう」
そっと目を閉じる。唇に温かいものが触れ、そのままベッドへ倒れ込んだ。
苦しげに顔をしかめる王。これほどまでに感情に支配されるのは、王にとっては初めてのことだった。
「どうすればいい?どうすればこの感情を抑えることができる…?」
絞り出すように言った。
「ありがとう。そこまで愛してくれて」
背中に手を回し、抱き寄せる。王の胸に顔をうずめると、ドクリドクリと鼓動が聞こえてくる。
「だけど、それをそのまま出してはいけないの。感情のままに動いては。相手のことを思いやりながら想うのが、本当の愛よ。押しつけてはだめ」
手を緩め、王の顔を見つめる。困ったような、不安げな表情だった。
「難しい、な…」
「できるわ。あなたなら」
王の頬に手を触れる。
止められないなら、あたしが止めるしかない。そう思ってたけど…――だけど信じよう、あなたを。
「…わかった。努力する」
その言葉に、あたしは微笑む。もう一度軽く口づけると、夜にまた来るから、と部屋を出た。
そしてその夜。約束通り、あたしは王の部屋を訪ねる。
「マキ」
愛しげに名を呼ぶ王の髪は、さらに伸びていた。短髪だったのが、今では肩に触れるほどだ。
「また…龍になったの?」
「ああ…だが、大丈夫だ。自制できてる」
おまえへの想いを。王は柔らかく笑み、あたしの頬に触れる。
「…そう」
そっと目を閉じる。唇に温かいものが触れ、そのままベッドへ倒れ込んだ。