アルカナの抄 時の息吹
第5章 「恋人」正位置
先ほどまで王の頬に添えられていたあたしの手は、王の下腹部に触れていた。布の下の熱が、手の甲でもわかる。
ああ…やっぱり。
そっと手を、そして唇も離すと、あたしは目を開けた。つかまれていた腕を、静かにほどこうとする。が、また強くつかまれた。
「マキ。もっとだ」
「だめよ。おしまい」
「マキ」
従ってしまいそうな声で、あたしの名を何度も呼ぶ。今日の王は、いつもよりいっそう積極的だった。
「ガロウ」
気づいていた。王の髪がまた少し、伸びていることに。
「愛してるんだ。おまえを」
「もちろん、あたしもよ」
「それならなんで拒む」
「最近のあなたが少し変だからよ」
「おまえのおかげで、少し変われたのかもしれない」
「そうね。愛を知って、あなたは変わったわ。それはいいことよ。だけど」
一旦、言葉を切る。言うべきか、少しだけ迷った。また、どう言えばいいかも悩んだ。
「最近のあなたは…どうしてそんなに必死なの。まるで何かに追われるように、愛し、愛を求めてる」
王は沈黙している。
「愛って、そうじゃないのよ。時には焦ってしまうこともあるけれど。愛さなければならないとか、愛されなければならないとか、そういうことじゃないの」
あたしを想う気持ちが、まっすぐすぎて、強すぎて。その気持ちの通りに、あたしに多くを求めている。それを自分で止めることはできないだろう。今の、王には。
「ゆっくりでいいのよ。ガロウ」
愛しげに、王の髪を優しく撫でる。王は、ふっと目を伏せた。
「…わかってる。だけど」
ああ…やっぱり。
そっと手を、そして唇も離すと、あたしは目を開けた。つかまれていた腕を、静かにほどこうとする。が、また強くつかまれた。
「マキ。もっとだ」
「だめよ。おしまい」
「マキ」
従ってしまいそうな声で、あたしの名を何度も呼ぶ。今日の王は、いつもよりいっそう積極的だった。
「ガロウ」
気づいていた。王の髪がまた少し、伸びていることに。
「愛してるんだ。おまえを」
「もちろん、あたしもよ」
「それならなんで拒む」
「最近のあなたが少し変だからよ」
「おまえのおかげで、少し変われたのかもしれない」
「そうね。愛を知って、あなたは変わったわ。それはいいことよ。だけど」
一旦、言葉を切る。言うべきか、少しだけ迷った。また、どう言えばいいかも悩んだ。
「最近のあなたは…どうしてそんなに必死なの。まるで何かに追われるように、愛し、愛を求めてる」
王は沈黙している。
「愛って、そうじゃないのよ。時には焦ってしまうこともあるけれど。愛さなければならないとか、愛されなければならないとか、そういうことじゃないの」
あたしを想う気持ちが、まっすぐすぎて、強すぎて。その気持ちの通りに、あたしに多くを求めている。それを自分で止めることはできないだろう。今の、王には。
「ゆっくりでいいのよ。ガロウ」
愛しげに、王の髪を優しく撫でる。王は、ふっと目を伏せた。
「…わかってる。だけど」