
アルカナの抄 時の息吹
第6章 「戦車」逆位置
城じゅうの掃除を任されたあたしは当然、ここも掃除している。余談だが、パーティーの後の散らかり具合を見て唖然、直後、誰が掃除したと思ってんのよ、と怒り狂っているところを城の者に見られている。その後、ぶつぶつ文句を言いながら掃除し直したのは言うまでもない。
「どこ?何をするところ?」
手を引きずんずんと歩いていく王は、庭園の方ではなく、城の西側へと進んでいく。
「着くまで言わない」
振り向いた王の顔は、まるでいたずらを思いついた子どものようだった。
整えられた低木。それが迷路のように並び入り組む緑のラビリンスを抜け、小さなアーチをくぐる。と、王はそこで手を離した。
「ここだ」
そこには、隠れ家のように小さく佇むガゼボがあった。ガゼボとは、庭園などに立てられる、屋根のある簡単な作りの建物で、いわゆる西洋版東屋だ。
「こんなところがあったんだ…」
掃除、してない。
「限られた人間しか立ち入らせてないからな。そもそもここの存在を知らない者がほとんどだ」
掃除はいい、ハナからこの場所は入れてない、とあたしの考えを読み取るように王が言った。
「ああ、そうなの」
「マキは特別だからな。自由に出入りすることを許可する。ここのことは、誰にも言うなよ」
「わかった」
あたしが微笑むと、王は満足げに口角を上げた。
「今日はここでお茶でもしよう」
小さなテーブルと椅子を示す。テーブルの上には、ティーセットが置いてあった。
二人きりの、穏やかなひととき。そんな午後をゆっくりと過ごした。
「どこ?何をするところ?」
手を引きずんずんと歩いていく王は、庭園の方ではなく、城の西側へと進んでいく。
「着くまで言わない」
振り向いた王の顔は、まるでいたずらを思いついた子どものようだった。
整えられた低木。それが迷路のように並び入り組む緑のラビリンスを抜け、小さなアーチをくぐる。と、王はそこで手を離した。
「ここだ」
そこには、隠れ家のように小さく佇むガゼボがあった。ガゼボとは、庭園などに立てられる、屋根のある簡単な作りの建物で、いわゆる西洋版東屋だ。
「こんなところがあったんだ…」
掃除、してない。
「限られた人間しか立ち入らせてないからな。そもそもここの存在を知らない者がほとんどだ」
掃除はいい、ハナからこの場所は入れてない、とあたしの考えを読み取るように王が言った。
「ああ、そうなの」
「マキは特別だからな。自由に出入りすることを許可する。ここのことは、誰にも言うなよ」
「わかった」
あたしが微笑むと、王は満足げに口角を上げた。
「今日はここでお茶でもしよう」
小さなテーブルと椅子を示す。テーブルの上には、ティーセットが置いてあった。
二人きりの、穏やかなひととき。そんな午後をゆっくりと過ごした。
