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アルカナの抄 時の息吹

第6章 「戦車」逆位置

「あ゙ああっ!!」

物が激しくぶつかり、落ちる音。さらにはガシャン、となにかが割れたようだが、それでも気にしなかった。気がすまなかった。

蒼白い腕が、テーブルの上を薙ぎ払った。のっていたものが、音を立てバラバラと周りに散らばる。だが急激に無気力になり、なにもなくなったテーブルの上にだらりと突っ伏した。大妃の部屋は、大いに荒れていた。

“押しつけないで”?

押しつけないでってなによ。

私がなにを押しつけたというの?

あなたも私も、それでうまくいってたんじゃない。

あんなに…愛していたのに。

私には、あなただけだったのに。

「…どうして」
どうして…こうなってしまったの。顔をあげようとしたのを、途中でやめる。いろんな記憶の染み込んだこのベッドを――部屋を、目に入れたくない。涙を拭うように、腕の上に打ち伏した。





「マキ。庭へ行こう」
穏やかに笑み、王が言った。あの広い庭には、掃除のイメージばかりがついてしまっている。まさか掃除ではないわよね、と言うと、王は違う違うとかぶりを振った。

「良いところがあるんだ。おまえには特別に教える」
さあ、と手を差し伸べる王。その手を取って、共に庭へと向かう。

城を出てすぐ正面には庭園があり、それを抜けると、開けた平地が広がっている。もちろんここも王城の敷地内で、庭の一部だ。芝地になっており、様々な目的で利用される。先日のパーティーもここで行われた。

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