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アルカナの抄 時の息吹

第6章 「戦車」逆位置

「それは」
王が、ふっと目を伏せた。

「――わからない。だが、少なくとも数日、いやもっとしばらくは…俺の言う通りに」

「無理よ、そんなの」
ピシャリと言い放つ。王の言い分を受け入れることはできなかった。だって、それは。

「なんのためかも、いつまでかもわからないなんて。そんなのはダメ。そんなことのために、あたしの自由を奪われたくない」

王の悲しげな目が、こちらを見た。

「…どうしてもか」
絞り出すような声で、王が問う。

「…どうしてもよ」
王の目を直視しながら、凛と答えた。風が二人の間を吹き抜ける。さんさんと降りそそぐ暖かな日差しに似合わない、肌を突き刺すような鋭い風。

「なら、仕方ないな」

ほっと胸を撫で下ろしたとき、王の手があたしを捕らえた。荒々しくはないが、あたしの両肩を、がっちりと堅くつかんでいる。

「な、なに」

「こうするしかない」
そう言って、片手をあたしの頭の後ろに回して強引に口づけを落とす。

「んっ…!や、めて…!」
必死に抵抗すると、自然にか意図的にか、一度唇が離れた。

「やめない」
王の目が、ギラリと光った気がした。そのまま押し倒され、馬乗りになった王があたしの首筋に舌を這わせる。離してと抵抗しても、今度はさっきよりも力強くて微動だにしない。

愛してる、わかってくれ、と王は繰り返しささやいた。





           第六章 完

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