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アルカナの抄 時の息吹

第6章 「戦車」逆位置

あたしが言わんとしていることを察したのか、王の表情が陰る。あたしの視線から逃れるように一度目を伏せ、またあたしを見た。

「覚えてる」
王はわずかに眉尻を下げ、苦しげな顔を一瞬見せた。

「“愛さなければならないとか、愛されなければならないとか、そういうことじゃない”…おまえはそう言ったが」

「――今だけは、愛させてくれ。俺に。愛されてくれ」
頼む、と懇願する王に、あたしは正直戸惑った。

「…どうして?」

どうして、そんなに。理由を知りたい。そう思って言ったのに、王は目を反らしてわずかに黙り込んだ。やがて口を開く。

「そうしなければならない気がするから」

なによ、それ。理由になってない。

「そんな答えじゃ、納得できない!」

あたしは自由な恋愛がしたいの。

「マキ」
言い聞かせるように、諭すように。困ったような苦しそうなせつなげな顔で、王はあたしの名を呼ぶ。わかってくれ、と。

いつのまに、そんな顔をするようになったの。ずるい。言う通りに、したくなるじゃないの…。

「今だけって…いつまで?」

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