アルカナの抄 時の息吹
第7章 「審判」逆位置
はっ、と王は目を覚ました。
まただ。今日もまた、この感覚。言い様のない不安に、この頃毎日、目を覚ます。ただなんとなくもやもやとあったそれは、日に日にはっきりとしたものへと変わっていく。バラバラしていたものが凝り固まり、輪郭を持ち、確信めいた不安を急速に形作っていく。
直感。マキと離れてはならない。愛し合っていなければならない。でなければ。でなければ…。
何かが、起こる。
頬に触れる。…痛い。違う。痛いのは心だ。
あの後、マキが暴れるうち、俺はつかんでいた手を離してしまった。マキは、自由になった右手で俺の頬に思いきり平手打ちをし、俺の拘束からするりと抜けた。
直後は、うっすらと涙目になるほど痛く、しばらく経ってもヒリヒリしていたが、今は頬の痛みは引いている。ただ心の中に渦巻く――後悔の念は、一晩経てど消えない。それが未だズキズキと王を苦しめた。
…仕方なかった。その一言で片付けてしまうのは簡単だ。だが。
「マキは…」
慌てて起き、寝間着のまま部屋を飛び出した。マキの部屋へと急ぎ足で向かう。
マキ…マキ。
扉の前へ立ち、耳をそばだてる。…静かだ。なにも聞こえない。不安になり、扉に手を伸ばした。
まただ。今日もまた、この感覚。言い様のない不安に、この頃毎日、目を覚ます。ただなんとなくもやもやとあったそれは、日に日にはっきりとしたものへと変わっていく。バラバラしていたものが凝り固まり、輪郭を持ち、確信めいた不安を急速に形作っていく。
直感。マキと離れてはならない。愛し合っていなければならない。でなければ。でなければ…。
何かが、起こる。
頬に触れる。…痛い。違う。痛いのは心だ。
あの後、マキが暴れるうち、俺はつかんでいた手を離してしまった。マキは、自由になった右手で俺の頬に思いきり平手打ちをし、俺の拘束からするりと抜けた。
直後は、うっすらと涙目になるほど痛く、しばらく経ってもヒリヒリしていたが、今は頬の痛みは引いている。ただ心の中に渦巻く――後悔の念は、一晩経てど消えない。それが未だズキズキと王を苦しめた。
…仕方なかった。その一言で片付けてしまうのは簡単だ。だが。
「マキは…」
慌てて起き、寝間着のまま部屋を飛び出した。マキの部屋へと急ぎ足で向かう。
マキ…マキ。
扉の前へ立ち、耳をそばだてる。…静かだ。なにも聞こえない。不安になり、扉に手を伸ばした。