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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦

 舗道沿いに植わった桜並木が今、盛りを迎えようとしている。いつしか鈍色の空からは滴が落ち始めていた。
 この雨で桜もかなり散るだろう。
 雨に濡れ、しっとりと雨露を帯びた薄紅色の花びらは、何故か有喜菜の見たこともない裸身を想像させる。
 一糸纏わぬ姿で真っ白なシーツに横たわった有喜菜は、さぞかし美しく、この上なく淫靡に違いない。その白い素肌の上に露を落とすように、熱い口づけを落とせば、白い透き通った肌はほのかな桜色に染まるのだろうか。
 その様を、この眼で見てみたい。いや、見るだけでは足りない。唇で指先で存分に味わってみたい。
 しっかりしろ、俺。
 彼は自分を叱咤した。たまたま有喜菜が代理母になって俺の子を妊娠しただけの話じゃないか。

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