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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第9章 ♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦

「有喜菜に話しておかなければいけないことがある」
「なあに?」
 有喜菜は別に意図したつもりはないが、その表情がどうも直輝には子どもっぽく見えたようである。
 時々、直輝に指摘されるのだが、有喜菜自身には判らない。
―有喜菜って、本当、よく判らないよな。何かこう、ぞくってくるほど色っぽいと思いきや、俺たちが知り合った中学生の頃と変わらないみたいに無邪気な表情するんだもんな。
 そんな時、直輝は決まって、まるで眩しいものでも見るような視線をくれる。
―俺は昔も今でも、そんなお前が眩しくて、見てられないよ。
 と、他人が聞けば一笑に付すだろう科白を大真面目に言っている。
「お前が無事に身二つになったら、俺は紗英子と別れるよ」
「―!」
 有喜菜は息を呑んだ。

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