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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第9章 ♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦

 その日の夕刻、一人、マンションに戻った有喜菜宛てに速達が届いていた。
 有喜菜は自室のベッドに座り、その封筒を開けた。いかにも紗英子の好みらしい淡いピンク色の洋封筒を開くと、丁寧に折りたたんだお揃いの便せんと小さなお守りが出てきた。

―有喜菜へ
 大分、お産も近づいてきましたね。
 このお守りは奈良の有名なお寺で特別にご祈祷して頂いたものです。
 本当はあなたと一緒に安産祈願に行けたら良かったのだけれど、もういつ赤ちゃんが生まれるか判らない状態のあなたに遠出はできないと思い、私一人で出かけてきました。
 今度、逢うときに渡しても良いのですが、少しでも早く身につけて貰いたかったので、送ります。 
 寒くなってきたので、風邪など引かないように気をつけてください。
 それでは、また。

        紗英子

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