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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第9章 ♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦

その時、一陣の秋の風が二人の側を吹き抜けた。ザアーッと音を立てて、頭上の樹々が葉を撒き散らす。風に乗って、赤や黄色の眼にも鮮やかな葉が舞い上がった。
 葉が降る、降る。
 雪のように、すべてのものの上に。
 有喜菜と直輝は一切の言葉を発することもなく、降り続ける色鮮やかな葉を浴びながら立っていた。
 静かな秋の公園を、ゆっくりと季節がうつろってゆく。

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