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サンタとトナカイ、天使と私
第5章 天使
「ラルフさん」
「レイ、泣いているの?」
私は瞼を閉じて首を振る。
「思い出してたんです。クリスマスの夜に教会で天使に会ったときのことを」
「天使?」
ラルフさんは驚いたような声を出した。
「美しい天使がいたんです。その天使が光を、弟を私にくれたんだと思ってた。でも、その人は天使じゃなかった」
私は目を開けてくすくすと笑って見せた。
まさか、彼も覚えていてくれたなんて。あの時から、ずっと。ずっと憧れていた彼が目の前で目を見開いている。
「え?」
「綺麗な金色の髪と海の色をした瞳のその人は私より何倍も背が高くて、それに美しかったです。大きな手で私の頭を撫でてくれました。それで、その人が言ったんです。君は優しい良い子だね。大きくなったら」
ラルフさんの目が見開かれる。私は続けようとしたが、それは低く柔らかな声で遮られた。
「僕のお姫様になってほしいな」
ラルフさんの伏せられた睫毛が震えている。
そう、あの時から私は王子様を……目の前にいるこの男性を待ち続けていたのだろう。
「レイ、僕のお姫様になってくれないかな」
顔をあげたラルフさんの輝く瞳が私を捕えて離してくれない。お姫様なんて台詞が似合うのはこの人だけだと麻痺しかけている頭でぼんやりと考えた。
目の前の男性が私のことを求めてくれているなんて信じられない思いとじわじわと身体中を満たす幸福が襲いかかってきた。
「……はい」
「レイ、泣いているの?」
私は瞼を閉じて首を振る。
「思い出してたんです。クリスマスの夜に教会で天使に会ったときのことを」
「天使?」
ラルフさんは驚いたような声を出した。
「美しい天使がいたんです。その天使が光を、弟を私にくれたんだと思ってた。でも、その人は天使じゃなかった」
私は目を開けてくすくすと笑って見せた。
まさか、彼も覚えていてくれたなんて。あの時から、ずっと。ずっと憧れていた彼が目の前で目を見開いている。
「え?」
「綺麗な金色の髪と海の色をした瞳のその人は私より何倍も背が高くて、それに美しかったです。大きな手で私の頭を撫でてくれました。それで、その人が言ったんです。君は優しい良い子だね。大きくなったら」
ラルフさんの目が見開かれる。私は続けようとしたが、それは低く柔らかな声で遮られた。
「僕のお姫様になってほしいな」
ラルフさんの伏せられた睫毛が震えている。
そう、あの時から私は王子様を……目の前にいるこの男性を待ち続けていたのだろう。
「レイ、僕のお姫様になってくれないかな」
顔をあげたラルフさんの輝く瞳が私を捕えて離してくれない。お姫様なんて台詞が似合うのはこの人だけだと麻痺しかけている頭でぼんやりと考えた。
目の前の男性が私のことを求めてくれているなんて信じられない思いとじわじわと身体中を満たす幸福が襲いかかってきた。
「……はい」
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