
恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
俺も俺だ。
俺は姉さんが死んでも、声が出なくなっても学校に行っている―一応。
毎日毎日、ずっとあの屋上ですごしている。
別にいじめられた訳でも、友人がいない訳でもない。
梓のように毎日やって来るやつは他にはいないが、メールくらいしている。
ただ…あの教室に、幸せに暮らしていたあの時に戻りたくないだけ。
母さんを置いてそこへは戻れない。
俺だけが幸せになんかなっちゃ駄目なんだ。
だから俺はこの異常な生活の中にいる。
―ベッドに寝転がって暗い天井を見つめていると、考えが止まらない。
俺はどうして生きているのだろう。
それは母さんのためだ。
でも、母さんはどうして生きているのだろう。
俺なんかのためじゃない。
あの幸せはもうないのに…
