
恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
「ところで、お母様に挨拶をする訳にはいかないだろうか?」
ひゅるり。
冷たい風が一気に吹き抜けた。
頭のてっぺんからつま先まで、一瞬にして冷えてしまう。
今、俺たちは玄関先で会話している。
ま、俺は喋ってないけどな。
母さんと梓は本当に仲が良かった。
家に来ても、俺をそっちのけで話していることも多々あった。
だがあの日以来、梓を母さんに会わせてはいない。
会ってしまったらどうなるか…怖すぎる。
これ以上、刺激を与えたくない。
母さんまで失ったら…
「聡?」
