
恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
はっとしていつの間にか下がっていた顔を上げると、梓が心配そうな顔をしていた。
駄目だ、梓に心配をかける訳にはいかない。
俺は無理矢理笑顔を作る。
梓も無理矢理、笑った。
「大丈夫。聡が会っていいというまで、私は会わない」
違う。
そんな風に笑わせたいんじゃない。
止めてくれ…梓はいつも通りでいてくれ。
「じゃ、風邪を引くといけないから、そろそろおいとまするとしよう。また明日」
そう言って梓は帰っていった。
俺はただ、その背中を黙って見送るしか出来なかった。
