恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
しばらく泣いて涙が渇れた後も、俺達は抱き合っていた。
というか泣き顔を見られたくなくて、お互いどうすればいいのか分からなくなっていた。
タイミングが難しい…
「なぁ聡」
梓が小さく俺を呼んだ。
声が出ないから変わりに背中をとんとんっと叩いてやる。
「何があったのか、大体山本さんに聞いたんだ」
ちょっとだけ沈む梓の声。
ま…あの状況じゃ、山本さんでも話すしかないわな。
「聡からは聞かない。でも…これだけは言っておくぞ」
そこで梓の声はすっと優しいものに変わった。
すごく温かくて、心地よく響く。