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記憶売りのヤシチ

第1章 記憶の飴

カラ…

暗闇の中。何か、ぶつかり合う音が聞こえた気がした。ふと前を見ると、仮面をつけた見知らぬ青年。青年…かどうかは仮面で顔が見えないためわからないが、とにかく男性であることは間違いなさそうだ。


「…素敵な記憶はいらないかい」
その人は言った。声から、やはり青年と言って良さそうだった。

…なぜ仮面をしているのかは今はさておき、彼の言葉はどういう意味だろう。


「幸せな記憶、楽しい記憶、…なんでもあるよ」
声の若々しさに比べて、穏やかな口調。

彼は小瓶を取り出した。中には、カラフルな、パチンコ玉ほどの小さな珠がいくつか入っていた。


「じゃあ…」
私は小瓶に目を移す。色とりどりの玉をゆっくりと、順に見た。

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