テキストサイズ

チェーンな2人

第2章 もう、お別れなんて…

船を見ると











彼は

船の最後尾に立って

こちらを見つめていた












海も空も真っ暗で

どんな表情をしているのか
なんて全く分からない











でも彼は

しっかりと

私を見ていた

















私も

彼から目をはなさなかった












だんだん船は遠くなり

彼の姿が小さくなる












ふと

彼が

右手を高く上げ

手を振った















たった

一度だけ


















そして私は

その場で

泣き崩れた

悲しい以外の感情なんて

そこにはなかった












黒い海に吸い込まれるように

船は

ゆっくりと

ゆっくりと

進んで行き

しばらくして

彼の姿は

確認できなくなってしまった








彼が見えなくなっても

船が見えなくなるまで

私はそこに

泣きながら

立ち尽くしていた





















一人に、なっちゃった

















心に穴が空いたような感覚で

どのくらい

そこに立っていただろう












そろそろ…帰らなきゃ














ストーリーメニュー

TOPTOPへ