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チェーンな2人

第3章 そんなの嫌だよっ

あぁ 時間

もうギリギリだな








俺が出勤の準備をはじめると

彼女はしばらく

ぼんやりしていた

疲れたのか眠いのか…

何考えてんだ?









バタバタと

俺は仕度を済ませた










彼女は

パジャマを着たまま

ベッドの上に

ペタンと座り動かない




まだ少し放心状態だ









俺は彼女のそばに座り

髪をなでた

『俺、もう行くよ
 大丈夫か?』

『……うん』

お前はゆっくりうなずいたけど

全然大丈夫じゃないじゃないか

分かってるけど

俺もう行かなきゃ












彼女を軽く抱きしめ

少し持ち上げる

ベッドから降りて

玄関まで送ってくれ

と、目で話しかけた





俺のあとを

とぼとぼと付いてきたお前は

玄関まで来ると

やっと笑顔を見せてくれたね




『空港まで気をつけてな

 楽しかったよ

 来てくれて、ありがとな』



『うん』



『じゃあ……いってきます』



俺は、もう一度だけ

彼女を抱きしめキスをした

体をはなすと

彼女が

俺のシャツをつかんだまま

うつむいていた…






二回、優しく名前を呼ぶと

ゆっくり手をはなした








どうしよう…

俺、仕事行きたくない

もうお前帰したくない











彼女は

涙をこらえて

かすかに笑い

『行ってらっしゃい』

と小さく言った









俺は

できるだけ明るく

じゃあな

と、玄関ドアを開け

彼女の顔を見ながら

ゆっくりとドアを閉めた









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