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チェーンな2人

第1章 会ったばかりなのに

「まとまった休みが取れるから
会いに行くよ」





やっと会える

なんて幸せ

何ヶ月ぶりだろうか…






それから
会える日までの毎日は
もちろん電話も楽しい

電話を切ったあとの涙も
流れない日々が続く




久しぶりに会ったら

まず、何て話かけよう…
何て話かけてくれるかな?
すぐに手をつないでくれるかな…
何着て会おうかな
どこ行こうかな
天気いいかな



そんな事を
ぐるぐる頭の中で
考える毎日を送った





彼との再会の当日
空港まで迎えに行く私は
考えていた





まず…

笑顔で
久しぶり、会いたかったよ
と言いながら
できれば彼に抱きつきたい




そんな
ドラマみたいな…
映画じゃあるまいし…
彼だって嫌がるだろう
実際、私も恥ずかしい



じゃ、せめて
彼の腕に
私の腕をからませたい

それくらい…
いいよね?





彼と腕を組み
グッと寄り添い
彼の肩に
頬をスリ寄せるのが
私は好き



軽いお化粧も気にせず
スリ寄せる私に
彼はいつも
服が汚れちゃうから
ダメだよ
と、優しく言う



久しぶりに
ダメだよって言われても

あの感触を味わいたい




黒いコート
着てなければいいな…
黒じゃなければ
許してくれるかもしれない




あぁ、考えてるだけで
幸せ
楽しくて死にそう






一人ニヤニヤしながら、
空港へと向かった







着陸の時間が近づく

到着口あたりで
彼を待つ

鼓動は高鳴り
緊張状態





彼を見つけたら

言うセリフは決まっている

大丈夫、笑顔で

大丈夫









あ、彼だ










ゆっくり、私の方を
見つめながら
彼が歩いてくる


あぁ
こんな顔だったね

そう
ちょっと照れた顔は
そんな感じだった

あれ
ちょっと痩せたかな


などと
久しぶりに見る彼を
観察した


私は一歩も踏み出せず
彼が私の元へ
来てくれるのを
ただただ待っていた












あ、黒いコート着てる


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