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チェーンな2人

第1章 会ったばかりなのに

彼は黒いコートを着ていた





笑顔で、久しぶり






ちゃんと決めていたのに
何も言葉が出ない




黒いコートが
ショックだった訳じゃない

ホントは少し動揺したけど

なんとも照れくさくて
恥ずかしくて
どうしようもないのだ









電話では
あんなにスラスラ出てくる言葉が出てこない

笑顔である事は確かだけど
恥ずかしくて
彼に
見られている事が
恥ずかしくて
うつ向き加減になってしまう

どうしよう
久しぶりの再会なのに












「久しぶりだね
行こうか」



「うん」











結局
再会の会話は
それだけ


あれこれ考えていた事は
何ひとつ
実行できなかった


手を繋ぐことすら
できなかったのだ









もどかしい













前にバイバイって
別れたときは
もっと近くにいたのに

もっと触れあっていたのに










もどかしい











なんだか
他人行儀な二人は
まず
食事をとる事にした



しばらく歩きながら
近況報告などしている間に
いつもの会話のテンポが
よみがえり
緊張もほぐれてきた






「何食べたい?」


「なんでもイイよ」







そんな、ごく普通の会話を
交わしながら
小さなお店に入った


テーブルも小さめ
向かいあって座った


ちょっと近くて照れる



向かいに座っているから
食べている仕草を
見られてしまう
気をつけて
食べなきゃ



なんて思いながら
二人で
食事をはじめた

ドキドキして
味なんて分からなかった

まるで
付き合い始めたばかりの
恋人同志のようだ

もう
ずいぶん
付き合っているのに…

同じ空間にいる時間は
ほんのわずかだけど…







しばらくして
食事中の彼に
目を向けてみた




あ~
私の大好きな彼が
ココに居る

うん
笑顔がすてき
やっぱり大好き…










よく見ると
彼のくちびるに
パスタのソースが
ついてる


彼が
それを
ふと舌で舐めとった…













あ……



キス



したいな




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