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恋ばか

第10章 ~婚約者~

しばらくすると、亮は唇を離した。

「震え…止まったでしょ?」

「え…」

気が付けば、体の震えは収まっていて…

「ほら、行くよ?」

そう言うと、亮は客間の扉を開けた。

―…中には笑顔の綾音と、厳しい顔をしたお祖父様がいた。

「失礼します。」

「…座りたまえ。」

亮は「はい。」と笑顔で返事をすると、お祖父様の前に腰を掛けた。

俺も、亮に続いて席に着く。

境達は後ろに並んで座る。

(…他は洋風っぽいのに、ここだけ和室なのか…)

辺りを一瞬見回して部屋を観察する。

…何を話せばいいのかわからず、少しの間沈黙が続く。

「久しぶりだね。 留架。」

「あっ、うん…」

沈黙に耐え切れなくなったのか、綾音が口を開いた。

「境も、春架も久しぶり。」

「あ、はい。」

境は綾音に返事を返さなかった。

当然だ。 だって綾音は―…

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