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恋ばか

第10章 ~婚約者~

(ダメだ…体が震えてくる…)

思い出すだけで無意識に体が震え出す。

俺が震えてるのに気づいたのか、春架が不安そうに見つめてきた。

俺は少し微笑んで「大丈夫だよ。」と、春架を安心させる。

「…そうだよな綾音? お前はずっと父さんにつきまとってた…お祖父様のご命令じゃなくても…」

「…っ…」

綾音はしばらく何も言わずに黙っていたが、ゆっくりと顔を上げた。
その表情を見て、俺達は言葉を失った。

「っ!?」

綾音が笑っていたからだ。

「だったら何? 好きな人に振り向いてもらえるように頑張るのはいけない事? あなたのお母様はもう亡くなってるんだから、別に浮気ではないでしょ?」

「っ!! それは…」

確かに、綾音が言ってる事は正論だ。

でも、だからって…

「それに、あなたがその事で私を責めても意味ないわ。 だって、もう想いは通じたから。」

「は…?」

意味がわからない…

綾音が怪しげに微笑むのと同時に使用人が部屋に入ってきた。

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