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恋ばか

第10章 ~婚約者~

「…坊ちゃま…が……いらっ……しょう…?」

「…?」

声が小さくて聞きとれないが、亮が深刻そうに顔を歪ませた。

亮がしばらく無言で考え込んでいると、亮よりも早く、綾音がその問いに答えた。

「お通しして下さい。」

「ちょっ、待っ…」

亮が声を掛けるも、既に使用人は一礼して部屋を出ていった後だった。

「なに? どうしたの、亮…?」

なにが起きてるかわからず、亮に問い掛けると、代わりに綾音が俺の疑問に答えた。

「成海(なるみ)さん…あなたのお父様がいらっしゃったのよ。」

「っ!?」

その言葉を聞いた瞬間、俺の思考回路は完全に停止した。

(…なんで…父さんが…)

俺が意識を戻したのは春架が必死に俺を呼ぶ声を聞いた時だった。

「兄ちゃん!! しっかりして!! 早く…」

俺は春架の言葉を遮ると、黙って頷き、ゆっくりと立ち上がった。

「留架…?」

急に立ち上がった俺を不審に思ったのだろう。
亮が心配そうに声を掛けてきた。

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