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恋ばか

第16章 ~記憶~

「え?」

「なんで、怒らないの? 俺は、兄ちゃんの大切な人を盗ったんだよ?」

そう言ってつらそうに唇を噛む春架に、優しく声を掛ける。

「なぁ、春架…結構前に俺が話した事覚えてる?」

「ぇ…?」

まさか、みんなの前でこんな話をするなんて…

想像してなかったな…

「親に決められた相手じゃなく、自分で選んだ本当に好きになった人と結ばれたいって話、覚えてるか?」

「っ…うん…」

春架が頷いたのを確認すると、言葉を続ける。

「覚えてないから何とも言えないんだけど…俺が小原さんと別れたって事は、俺にとって小原さんは、本当に好きになった人じゃなかったって事だろう?
そうじゃないとしても、小原さんは俺じゃなくて春架を取ったんだから、小原さんにとって俺は、本当に好きな人じゃなかったんだと思う。
俺よりも好きな人が出来た。 それが春架だったってだけだろ?
俺が傷つくから。 っていう理由で二人を引き離したくないし、春架には幸せになってもらいたい。
だから、怒ったりしないよ。」

「…兄ちゃん…」

俺の言葉を聞いて、春架は泣き出した。

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