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恋ばか

第19章 ~愛しい人~

「…だめだよ…亮…」

「なんで?」

そんなことが現実になったらすごく嬉しい。

でも…それじゃあ、春架はどうなる?
あんなに亮のことが好きなのに…
俺のせいで、泣いてほしくない。

「亮の気持ちはすごく嬉しい。 俺も、そうなれたらいいなと思うよ。

でも、俺は春架が泣くことになるのは嫌なんだ。 春架が笑っていられるなら、俺はなんだってするよ。

もう、春架から大切な人を奪いたくないから…」

「大切な人…?」

亮の言葉に、黙って頷く。

「前に話したよね? 俺は母さんを殺したって。

春架は…母さんが大好きだった。 もちろん、父さんのこともね。 甘えてくる春架がかわいかったのか、二人は春架を特別扱いした。 周りも、俺と違ってすぐに心を開く春架をすごくかわいがってた。

…そんな春架に、俺が唯一勝てたのは勉強だけだった。
でも、どんなに頑張っても…どんなにいい成績をとっても、父さんと母さんは俺より春架をかわいがった。
俺は、それが悔しくて悔しくて仕方なかった。」

あの頃のことを思い出すと、おかしくて笑えてくる。

俺はなんで…あんなに必死だったのか。 と…


「…誰も俺のことを見てくれないなら、春架みたいになろう。 そう思って、俺は本当の自分を押し殺して明るく振る舞った。

最初はみんな驚いてたけど、俺も春架と同じようにかわいがってくれた。
でも…父さんと母さんは、春架ばかりかわいがった。
…父さんと母さんは、俺達を平等に扱ってるつもりだったんだろうけど…」

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