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恋ばか

第19章 ~愛しい人~

(昔の話を亮にするのは、2回目だな。)

そう思い、少し微笑む。

こんな話…境にもしてないのに。

「…でも、そのうち自分を隠すのがつらくなってきて…
母さんが事故に遭ったあの日、俺は最後のお願いと思って、プレゼントを買いに行ってもらった。
これで、本当の自分に戻ろうと思って…でも…」

体がだんだん震えてくる。

思い出すだけでつらい…こんな記憶…

「…母さんが帰ってくることはなかった。

…そのときの春架の悲しみようは、言葉にならないくらいだった。
父さんも、母さんを失ったことによって、人が変わったように荒れた。

俺は春架から、同時に大切な人を二人も奪ってしまったんだ…」

そこまで話し、ゆっくりと顔を上げて亮を真っ直ぐ見つめる。

「…だから、俺はもう春架から大切な人を奪いたくない。
春架の泣き顔を見るのは嫌なんだ。」

俺の話に、亮は悲しそうに顔を歪めた。

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