
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「ははは!! それはないよ、小泉君。」
「そうか?」
二人の楽しそうな笑い声が、ここまで聞こえてくる。
(もし本当に木原先輩がそんな人なら、空さんはあの人と一緒にいて平気なのかな?)
そちらに目を向けると、二人が密着しながら漫画を読んでいた。
(なんで漫画読むのに、そんなに密着する必要があるんだよ…)
「春架…?」
「…ぁ、な、なに?」
境兄ちゃんに声をかけられ、はっとする。
(俺…今、なに考えてた?)
胸がモヤモヤする。
「…気をつけろよ?」
「へ?」
言葉の意味が理解できず、首を傾げる。
「言っただろ。 木原は気になった奴の周りから人を消すって。」
「………?」
境兄ちゃんがなにを言いたいのか、全然わからない。
「だから、今木原が空を狙ってるんだったらお前が邪魔になるだろ。
なにしてくるかわかんないから、気をつけろって言ってんの。」
「な…んで…」
何故、境兄ちゃんが空さんとの関係を知っているのか、わからない。
「気づかないわけないだろ。 俺は留架から、お前のことも頼まれてんだぞ?」
そう言って悪戯っぽく笑った境兄ちゃんは、急に真剣な顔になった。
「本気になるなよ。 あいつの心まで求めるな。 木原になにされるかわからないぞ。」
心まで求めるな…
