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恋ばか

第29章 ~好きになっちゃいけない人~


「好きな人ってさ…小泉先輩…だよな?」

「……うん。」

素直に頷けば、ユイはため息をついた。

「まぁ…いいんじゃないの? 身体を繋げてれば、心も欲しくなるよ。」

「ユイ…」

驚いて顔を上げると、ユイは笑っていた。

「振り向いてもらえるように頑張れよ。」

「ありがとう。 でも…」

最初に決めたルール…

「約束したんだ、空さんと…」

「約束?」

俺はそれを破った。

「最初に決めたんだ。 『絶対にお互いを好きにならないこと。』って。」

だから…

「もう…空さんの隣にはいられないよ…」

「そっか…」

聞こえるか聞こえないかくらいの声量で泣きそうになりながらそう言えば、ユイは俺の頭を軽く撫でてくれた。

「まぁ、お前がそれでいいならいいんじゃない?」

「………」

顔を上げれば、ユイは俺が大好きな笑みを浮かべていた。

「今度はちゃんと慰めてやるよ。」

「………うん。」

「ありがとう。」口から言葉は出てこなかったけど、ユイには伝わったみたいだ。

にっこり笑って教室に入って行った。

「終わらせなきゃ…」

大丈夫。 空さんを失っても、俺にはユイがついててくれる。

「なにを?」

「ぅわっ!?」

耳元で急に囁かれ、驚いて振り返れば、空さんがにっこり笑って立っていた。

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