
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「よく来たね。」
「……話ってなんですか?」
中に入ると、木原先輩はすでに来ていた。
「そう怖い顔しないでよ。 まずは自己紹介からね。」
「知ってます。 木原留季先輩。
別名、男殺しの小悪魔…ですよね?」
木原先輩は一瞬驚いた顔をした後、すぐに笑顔に戻った。
「こっちのことは、もうリサーチ済みってことか。」
「知り合いに聞いただけです。」
素っ気なくそう言えば、木原先輩はゆっくり口を開いた。
「その知り合いってさ…」
「……?」
なんだろう…この感じ…
「桜木留架のこと?」
「…っ…!?」
怖い…なにこれっ…
「君たちは兄弟そろって、僕の邪魔ばかりしてくるね。」
「…っ…」
「せっかく桜木留架がいなくなったと思ったのにさ~…」
木原先輩が漂わせる殺気にも近いものに、俺は体を強張らせた。
「今度はその弟に邪魔されるなんて、思ってもみなかったよ。」
この人、一体何者…?
「…話って、それだけですか?」
「まさか。 本題はここからだよ。」
震える声でそう言えば、鼻で笑われた。
「なんですか…?」
「単刀直入に言うとね…」
木原先輩を真直ぐ見据えながら、次の言葉を待つ。
「空君から手を引いてくれないかな?」
「…ぇっ…?」
空さんから?
