
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「あのさ…」
「ん?」
もうすぐ校門に着く…というところで、ユイが口を開いた。
「俺の思い過ごしだといいんだけど…もし俺のことで脅されたんだったら、気にすんなよ? 自分の身くらい守れるからさ。」
「…………」
ユイはそう言って、迎えの車の方に走って行った。
「…行かなきゃ…」
自分の迎えの車に乗り込み、小泉邸へ向かった。
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「お邪魔します。」
「よ。」
30分後…俺は空さんの部屋の前に立っていた。
(今日で全部終わりなんだ…)
そう思うと、なかなか車から降りれなかった。
(空さんの隣にいられるのも、触れるのも、抱かれるのも、今日で…)
最後…
その言葉が、重くのしかかってくる。
「…ふっ…」
なにを今更…
「…覚悟はできてたじゃないか…」
二週間前…二人をあの公園で見かけた時から…
それに…
「坊ちゃま?」
今回のことは…約束を破った俺が悪い…
「どうかなさいましたか?」
「…なんでもない。」
心配そうに尋ねてきた運転手に、そう言葉を返す。
「………」
大丈夫。 俺には、ユイがいる。
「行くか…」
重い腰を持ち上げ、空さんの部屋に向かった。
