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恋ばか

第29章 ~好きになっちゃいけない人~


そんな話…聞きたくない。

「…ユイ?」

「行こう、春架。」

「え?」

ユイは俺の腕を掴むと、俺を教室から引っ張り出した。

「ちょ、ユイ!!?」

訳が分からないままついて行くと、屋上に着いた。

「ユイ…?」

ユイは俺の手を離し、柵に寄りかかった。

「あんな話、これ以上聞かせたくなかった。」

俺のためにやってくれたのかと、嬉しくなった。

「ありがと。」

「ん。」

お礼を言い、ユイの隣に立つ。

『僕、本気で彼が欲しいんだ。』

よかったですね、先輩。

『付き合い始めたんだって。』

叶ったじゃないですか…

「…っ…」

これで、もう…

「…ぅ…っ…」

空さんはあの人のものになった。

「春架…」

泣き出した俺を、ユイは優しく抱きしめてくれた。

「っ…くッ…」

無理だ。

「…っユイ…」

「ん?」

空さんの手も、声も、唇も、熱も全部…

「忘れられないよっ…!!」

できるわけがない。

空さんを忘れるなんて…

「…っ…できなッ…」

ユイの腕の中で、感情を爆発させる。

「…ッ…くっ…ぅ…っ…」

ユイはなにも言わなかったけど、一定のリズムで背中を撫でてくれた。

「っ…ふっ…」

「落ち着いた?」

しばらくして、ユイがそう聞いてきた。

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