
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「…うん…っ…」
「よかった。」
優しく微笑むユイを見て、自然と笑みがこぼれる。
「…ありがと…」
「いいって。」
ユイは俺から離れると、どさりと腰を降ろした。
「座れよ。」
「うん。」
言われるまま、ユイの隣に腰を降ろす。
「もう一時間目始まってるな。」
「本当だ。」
携帯を開いて時間を確認すると、もうとっくに授業が始まってる時間で…
「ごめん。」
素直に謝った。
自分のせいで、ユイまで授業をサボらせてしまった。
「気にすんな。 たまにはこういいのもいいだろ。」
そう言って笑ったユイは、ごろんと寝ころんだ。
「今日は空がきれいだな。」
その言葉につられ、空を見上げる。
「…ほんとだ。」
空には雲一つなく、青く澄み渡っていた。
「あのさ、春架。」
「ん?」
目は空に向けたまま、返事だけ返す。
「忘れなくていいんじゃね?」
「…ぇ…?」
ユイの言葉に驚き、目を向ける。
「先輩のことを好きになった気持ちを大切にして前に進めばいいんじゃない?」
前に…
「小原先輩の時もそうだっただろ?」
「………」
言われてみればそうかもしれない。
空さんのことを好きになったからって、亮さんのことを忘れたわけではない。
亮さんのこと以上に、空さんのことを好きになっただけで…
