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恋ばか

第29章 ~好きになっちゃいけない人~


「ゆっくりでいいから、一緒に前に進める人を見つけろよ。」

「…うん。」

見つける確証なんてない。

「はぁ…」

でも、諦めないと空さんに迷惑がかかるから。

「……」

早く…諦めなきゃ。

「…架…春架!!」

「…ッ…!!」

どれくらい考え込んでいたのだろう?

ユイに肩をゆすられ、我に返った。

「ぁ…えっと…」

「大丈夫か? そろそろ行こうぜ。」

その言葉に時計を確認すると、もうすぐ一限が終わる時間だった。

「うん。」

「あ…」

立ち上がろうとすれば、ユイに腕を掴まれた。

「ぇっ…?」

「ちょっと待って。」

そして、そのまま引っ張られる。

「うわっ!?」

気が付けばユイの顔が目の前にあって…

(嘘っ…)

思わず目をつむってしまった。

「な~に期待してんだよ。」

「…?」

恐る恐る目を開くと、悪戯っぽく笑うユイがいた。

「お前っ…」

「そんな顔で行く気か?」

文句を言おうとすれば、言葉を遮られた。

「は…?」

「気づいてないのか。」

ユイは呆れたようにため息をつくと、ハンカチを取り出した。

「ほら、拭けよ。」

「…なにを?」

訳が分からず首を傾げると、ユイは無言になった。

「………」

「…?」

かと思うと、俺の顔をゴシゴシ拭いてきた。

「ちょ、な…っ!?」

「ったく…お前は…」

激しく抵抗すると、ユイは小さく舌打ちした。

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