
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「自分が泣いてるのにも気づかないのかよ。」
「ぇ…?」
驚いて動きが止まる。
(泣いてる…?)
頬に触れると、冷たい感触が。
「…ほんとだ。」
「いいから拭けって。」
どうやら無意識のうちに泣いてしまったらしい。
「…うん。」
ユイからハンカチを受け取り、顔を拭く。
「あ~…目、真っ赤になってるな。」
「まじか…」
俺の顔を覗き込んで、ユイはそう呟いた。
「泣いたのバレバレ。」
「教室行けないな…」
ため息をつき、考え込む。
「とりあえず、保健室行ってれば?」
「…そうだね。」
ユイの言葉に頷き、屋上から出る。
「ぁっ…」
「春架? どうし…」
階段を下りる途中で、思わず足を止めてしまった。
ユイが声をかけてくるが、その言葉も途中で止まる。
「空さん…」
「春…架…」
目の前には大好きな人。
それに…
「あれ、桜木君?」
その恋人。
「それに結崎君だよね? こんなところでなにしてるの?」
「えっと…」
戸惑う俺を見て、面白そうに木原先輩は笑った。
「まだ授業終わってないよね? 二人っきりでなにしてたの?」
「そ…れは…」
答えられずにうつむくと、二人が腕を組んでるのに気が付いた。
