
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「そう? 気を付けて行くんだよ?」
「も~…子供扱いしないで下さいよ~。」
亮さんは俺の頭を撫でながら、優しく微笑んだ。
「将来弟になるんだから、心配なんだよ。」
「…兄ちゃんと結婚する気満々ですね。」
「もちろん。」そう言って笑った亮さんは、俺のために道を開けてくれた。
「引き留めてごめんね?」
「いえ、お話しできて楽しかったです。」
正直に気持ちを伝えると、亮さんは優しい笑みを浮かべた。
「じゃあ、またね。」
「はい。 お義兄さん。」
悪戯っぽくそう言えば、亮さんは狐につままれたような顔をした後、困ったように笑った。
「お大事に。」
ぺこりと頭を下げ、保健室へと歩を進める。
(お大事に…か。)
空さんにも言われたけど、やっぱり気持ちが違う。
(もう本当に亮さんのことは…)
考えに没頭していると、廊下を歩いていた人とぶつかってしまった。
「あ、ごめん。」
その衝撃で、激しい目眩に襲われた。
(うわっ…やば…っ!!)
体勢を立て直そうとするが、体が言うことをきかない。
「春架君!!」
「春架!!」
自分を呼ぶ声を遠くの方に聞きながら、俺は意識を手放した。
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「ん…」
重たい瞼を持ち上げると、真っ白な天井が目に入った。
「春架!? 大丈夫か!?」
「…ユイ…」
名前を呼ぶと、ユイは安心したようにため息をついた。
