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恋ばか

第29章 ~好きになっちゃいけない人~


「ここ…どこ…?」

「病院。」

質問しながら、ゆっくり起き上がる。

「ぃ…っ…!!」

頭と左腕にいたみが走った。

「気をつけろよ。 左腕骨折してんだから。」

「え!?」

見てみると、左腕は包帯でぐるぐる巻きだった。

「俺…どうしたの?」

「…階段から落ちたらしい。」

意識を失ってそのまま…?

「やっぱり、俺がついて行くべきだった。」

そう言ったユイは悔しそうで…

「大丈夫だよ。」

そう言わずにはいられなかった。

「左腕だけで済んだし…ね?」

「そうだけど…それはっ…」

ユイはなにか言いかけて、口を止めた。

「ユイ?」

「…なんでもない。」

気まずそうに黙り込んだユイは急に立ち上がると、帰り支度を始めた。

「帰るの?」

「あぁ。 もうすぐ面会終了時間だし。」

時計を見ると、もうすぐ八時。

「俺…ずっと寝てた?」

「あぁ。」

手を休めず、ユイは頷いた。

「寝不足が原因で倒れたんだって。 ちゃんと寝とけよ?」

バッグを背負い、ユイはそう忠告してきた。

「うん。 わかった。」

「じゃあな。 明日は用があるから朝しか来れないけど。」

「ごめんな。」そう謝って、ユイは帰って行った。

「別に毎日来なくて平気だっての。」

そう悪態をつくが、嬉しいのが本音である。

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