
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「う…ん…?」
次に目が覚めたのは、夕方だった。
「もう夕方か…」
時刻は午後四時。
「結構寝たな。」
十分睡眠をとったおかげか、頭がすっきりしていた。
「随分気持ちよさそうな顔だね。」
声がしたことに驚き、振り返る。
「…木原…先輩…」
なんで…?
予想外の出来事に、頭が全く働かない。
「…どうしたんです…か…?」
とりあえず、そう尋ねてみる。
「ちょっと話があってね。」
そう言って笑った木原先輩を見て、背筋が凍りついた。
(…あの時と同じだ。)
資料室に呼び出された時と…
「君さぁ…ほんと、僕の気に障ることばっかりしてくるよね。」
「え?」
気に障ること?
「あんなことした後で、気持ちよさそうに寝てるし。」
木原先輩の言ってることがわからない。
「ぁ、あの…」
「なに?」
恐る恐る口を開いた。
「なんのことだかわからないんですけど…」
正直にそう言うと、木原先輩は驚いたように目を見開いた。
「君の幼馴染から聞いてないの?」
ユイから?
「そっか…結崎君は話してないのか。」
「だから、なにをですか?」
だんだんとイライラしてきた。
「君さ、階段から落ちたのに左腕を骨折しただけで済んだのはなんでだと思う?」
「え?」
急になにを…?
「落ちてる間、意識を失ってたんだよね?」
「………はい。」
木原先輩の言葉に、正直に頷いた。
「受け身もとれない人間が、階段から落ちたらどうなるかな?」
だんだんと、話が読めてきた。
「左腕の骨折だけじゃ済まないと思わない?」
「………」
確かに…どうして俺は、骨折だけで済んだ?
