
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「……運が良かった?」
俺が出した答えに、木原先輩は大きくため息をついた。
「バカじゃないの? 誰かが身代わりになったに決まってるでしょ。」
あのとき近くにいたのは…
「…亮さん…?」
しかし、木原先輩は首を横に振った。
「もう一人いたでしょ? 君が落ちる瞬間に。」
「………」
まさか…
「ようやく分かったみたいだね。」
あの声は…
「そうだよ。」
あの場所に…
「君をかばって階段から落ちたのは…」
本当にいたの…?
「空君だよ。」
空さんが━━……
「…ぅ…そ…」
「本当だよ。」
空さんが俺をかばって…
「そうでもなければ、僕が君の病室まで来ると思うかい?」
「………」
木原先輩がここに来た目的は…俺にそのことを伝えること…?
「僕がここに来たのはね、君に伝えたいことがあったんだ。」
「…?」
そう言って、木原先輩は一歩こちらに近づいてきた。
「結崎君が今日来れない理由、知ってる?」
「…ぇ?」
なんでそこにユイの名前が…
「それはね…僕が放課後に呼び出したからだよ。」
「…なんのためにですか?」
俺の質問に、木原先輩は怪しく笑った。
「なんのためだと思う?」
「……っ!!」
気が付けば、木原先輩に掴みかかっていた。
