
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「ユイになにする気だよ!?」
「…ッ……」
それでも笑いながら、先輩は口を開いた。
「僕は君に言ったよ。 あの資料室でね。」
あの日のことを思い返す。
「空君から手を引かないなら、君の幼馴染になにがあるか分からないって。」
確かに言われたけど…
「今回のことは君の故意ではなかった。 でも、君のせいで空君は…」
だけど、今回のことは…
「意識不明の重態になった。」
「……ぇ………?」
意識不明?
「頭部を強打してね。 いつ目を覚ますかわからない。」
嘘でしょ…?
「空君をそんな状態にしたのは…」
怒りをあらわにした表情で、先輩は俺を睨みつけた。
「まぎれもなく君だよ。」
「っ!!」
先輩から手を離し、その場に座り込む。
「君のせいでっ…君のせいで空君は…ッ…」
ポタポタと水滴が降ってくる。
「君がいなかったら…」
顔を上げると、先輩は大粒の涙を流していた。
「…空君はあんなことにならなかったのにっ!!」
「…っ……」
そうだ…
「なんでっ…空君が…」
俺がいなければ、空さんは…
「お…れ…」
意識不明になんかならなかった。
「…悪いけど…」
先輩を悲しませることもなかったわけで…
「償いはしてもらうから。」
俺がいたから…
「…いっ…!!」
先輩は俺の腕を掴み、ベッドに投げつけた。
