
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「チッ…またかよ。」
男が一旦、俺から離れる。
「ユイっ…」
「大丈夫か!?」
扉の前には、ユイが立っていた。
「なんでっ…木原先輩に呼び出されたんじゃ…」
俺がそう聞くと、ユイは得意げに笑った。
「あんな奴ら、5秒で倒したよ。」
ユイが言うなら、本当なんだろう。
「はぁ? 逃げてきただけだろ。」
「逃げるわけねぇだろ。」
男たちはユイの言葉を信じようとしない。
「なんなら、試してみるか?」
「はっ。 俺らをナメんなよ。」
ユイの言葉に乗せられ、男の一人が殴りかかった。
「よっ。」
「ぐっ!?」
男の腹部に、ユイの拳が入る。
「…っ…」
「「なっ!!?」」
男たちが驚いて声を上げた。
「1ダウン。」
「…のやろっ…」
もう一人の男の蹴りも避け、先ほどのように腹部に拳が入る。
「ッ!?」
「2ダウン。」
二人の男を倒し、ユイはこちらに近づいてきた。
「春架から離れろ。」
「チッ…」
残った男二人が、俺から離れる。
「そのカメラ、こっちによこせ。」
「…っ…」
ユイが手を伸ばすと、男は渋々カメラを渡した。
「どーも。 じゃ…」
「「っ!?」」
「ドスッ」と鈍い音がして、二人とも床に崩れた。
「しばらく寝てろ。」
ユイはそう言って、カメラをいじり始めた。
「よし。」
しばらくすると、ユイは顔を上げた。
「大丈夫か?」
「ユイっ…」
優しく微笑んだユイを見て、一気に安心感が溢れてきた。
「ユイっ…ユイ…ッ…」
「もう大丈夫。」
俺の頭を撫でながら、ユイは服を差し出してきた。
